1月2日現在のコーンの状況について考察する
コーン価格に影響しそうな要素について、調べてみた。
1.ブラジルの2017年産の輸出状況
シカゴ穀物相場におけるコーン価格はUSコーンの需給によって価格の上下がある。もちろん全世界的なコーンの需給といったマクロな状況も大きな価格変動要因となるのだが、直近の安値推移は、USコーンの出荷量の低迷によるものも大きいと思う。
USコーンの輸出量が減少している一因は、2017年産ブラジル産コーンの輸出量が大きく伸びたことが大きな要因である。
ブラジルの出荷量は下図のとおりである。
これによると、2017年産(2017/2018)は昨年(2016/2017)よりも大幅に輸出が増加していることがわかる。しかし、一昨年(2015/2016)よりも落ち込んでいることがわかる。
ちなみに、12月のWASDEのブラジルの輸出量の予測は36万tとなっている。これは、2015/2016年相当の輸出量である。しかし、現実には2017/2018年は2015/2016年よりも出荷ペースが大きく落ち込んでしまっており、とても36万tはおぼつかない状況になっていることがわかる。
つまり、次回のWASDEの更新(1月12日)で36万tからより現実的な32万t程度に下方修正される可能性が高いと思われる。
まとめ
・2017/2018産ブラジル産コーンの輸出量は下方修正される可能性が高い。
・但し、未出荷分が「ブラジル国内消費」になるのか、「ブラジルの繰り越し在庫」になるのかはわからない。(「ブラジルの繰り越し在庫」となるのが現実的なのだが、、、。)
↓
これとは逆にUSコーンの出荷量が伸びてくると、USコーンの価格が上昇する可能性はあるが、全世界の繰り越し残は変わらないため、価格への影響は限定的になるだろう。
(参照)ちなみに、2017年産のUSコーンの週毎の輸出状況は次の通りとなっている。
昨年の輸出が非常に好調であるのに対し、今年は過去5年の平均程度の推移となっている。昨年対比で見ると出荷が伸び悩んでいるように見えるが、過去5年で見れば出荷量はそんなに変わらない。今後も同水準で出荷されていくと見ていいのだろうと思うと、1~3月で徐々に出荷は伸びていくように思われる。
そういった意味では、若干の値上がりが期待できるのかもしれないが、期待できるものではないだろう。
2.USコーンからのエタノール生産量
コーンは食用、飼料用として使われるだけでなく、エタノールの生産にも使用されている。アメリカのガソリンにはエタノールが10%混ぜられる場合がほとんどのようで、燃料としての使用が主な使用用途となる。まずは、これまでのUSエタノールの生産の推移をまず見て行く。
2010年から現在までの1日当たりのエタノールの生産量の推移だが、右肩上がりとなっており、過去最高を更新を続けている。
このうち、輸出に回る割合は月間で2日分程度(約2,000千バレル)のため、たかが知れている。
参照:Fuel Ethanol (Renewable) Exports by Destination
アメリカ国内において、ガソリンへの配合比率は15%までOKとなっているのだが、まだまだ普及は進んでおらず、国内の需要が急激に上昇する可能性は低い。
一方で、アメリカ政府として輸出先の拡大には力を入れてきている。特に、まだまだガソリンに10%のエタノールを配合するE10ガソリンの普及すら遅れている、日本や中国への輸出が進んでいく見込みとなる。(下記記事によると、現状のエタノール価格はアメリカ産の方がブラジル産より安い)
参照:Japan will allow gas blends using U.S. ethanol | Agweek
こういった状況を加味すると、今後アメリカ産エタノールの需要の拡大が見込めると言える。
更に、直近のガソリン価格とコーン価格から算出されるエタノールの価格を調べると、次の通りとなる。
参照:USDA ERS - U.S. Bioenergy Statistics
表の右列のエタノール価格とガソリン価格が同党の熱量として比較できるのだが、発表されている最新データである2017年の10月からコーン由来のエタノールの方がガソリンより安い状況にまでなっている。これは過去を見ても例のない事態である。
この要因は3つ考えられる。
①コーンが安い
②ガソリンが高い(原油価格が高い)
③コーン由来エタノールの生産コストが下がった
2017年10月から2018年1月までで、①、③についてはほぼ変わらず、②についてはむしろガソリン価格が上昇しているくらいなので、エタノール安の状況は継続していると見て間違いないだろう。また、直近のエネルギー相場が上昇してきている状況であることから、コーン由来エタノールの価格が上昇する可能性も高く、採算から見ても今生産すべき局面に入ってきていると見ることもできるのではないかと思われる。
まとめ
・コーン由来エタノールの輸出が伸びそう
・コーンが安く、ガソリン(原油)が高いため需要が伸びそう
・ガソリン(原油)の価格上昇に連れられ、コーン価格も上昇しそう
↓
コーン価格上昇の可能性が高いと言える。
3.コーンを生産することによる農家の利益
アメリカのコーンベルトに住んでいる農家にとって、何を植えるのかは非常に重要な課題となるはずだ。もちろん、運に左右されるのだが、植えた作物によって最終的な利益が変わってきてしまうのだから当然だ。
コーンベルトにおいては、コーンの他に大豆の生産も可能な地域である。つまり、コーンが安値で、相対的に大豆が高値であれば農家は大豆を生産する可能性が高いということができる。
実際の1エーカー当りの利益もUSDAの資料にてアップされている。現在は2016年産の実績しかないものの、これは非常に参考になると思われる。
それぞれ、次の通りとなっている。
参照 USDA ERS - Commodity Costs and Returns
(便宜上、運営費、総経費と言う言葉を使用しているが、詳細は参照のサイトを確認されたし。)
2016年産コーン
Yield 175BU/エーカー
価格 $3.29/BU
売上ー運営費 $268.3/エーカー
売上ー総経費※ ▲$56.98/エーカー
2016年産大豆
Yield 52BU/エーカー
価格 $9.03/BU
売上ー運営費 $305.85/エーカー
売上ー総経費※ ▲$16.71/エーカー
※ 労務費、減価償却、土地の機会益、税金と保険料、農家運営費等を加味した場合。
この「価格」は先物ではなく、現物価格となっており、先物を取引しているものにとってはつかみにくい数値ではある。しかし、少なくとも、2016年産コーンの価格は現在の価格とそんなに変わらないのに対して、2016年産大豆の価格は現在の方が高値で推移してきていることに間違いない。
上記データの総経費では、土地保有者にとっては関係ない「土地の機会益」が含まれることから、「売上ー運営費」が近い数値と思われる。2016年産においては、コーンは$268.3/エーカーの利益を生んだのに対して、大豆は$305.85/エーカーの利益となり、大豆を植えた方が利益は多かったということができる。
2017年産を予測すると、コーンは2016年並みの価格とYieldであり、大豆は価格は去年よりも高く、Yieldは去年より低かったものの、売上は変わらないと思われることから、2017年産においても大豆の方が利益が多い年となりそうな状況である。
農家としては、1エーカー当たりの利益が高い作物を植えたいと当然思うことから、2018年産更にコーンの作付面積が減少し、大豆が増加する可能性が高いということができる。
まとめ
・2016年同様、2017年についてもコーンよりも大豆の方が利益率が良いと思われる。
↓
2018年産のUSコーンの作付面積は減少する可能性が高い。供給不安が少なからず出てくる可能性が高く、USのコーンの作付時期に向かうに従い、若干価格は強含むものと思われる。(但し、大豆とコーンは共に連作障害が出やすいため、一概に語れない部分もある。)
総括
今回、3点について調べてきた。それぞれ簡単にまとめると、
・今後のブラジルのコーン輸出
⇒36万t予測だったが、32万t程度になる可能性が高い。
・コーン由来エタノールの生産量
⇒今後も伸びてきそう。輸出が増え、アメリカ国内需要も伸び、コーン価格も原油高の連れ高になる可能性あり。
・コーンと大豆の利益率比較
⇒大豆の方が利益率が高く、2018年は大豆の作付面積が若干増加しそう。
以上より、いつかはわからないが、需要増と供給減によりコーン価格は強含む可能性が高いと思われる。ただ、先物を取り扱う為、先物の減価を加味するとなかなかに仕掛けにくい状況にあるように思う。
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